Works of Art〜美術工芸品図録10
2 Carved Mythological Decorative Spoons
牙彫ギリシア神話文装飾スプーン2点
Late 19thC France
19世紀後期 フランス
サインなし (上)長さ:21.5cm (下)長さ:25.0cm
古代から中世までヨーロッパにおいて獣牙のレリーフ(浮き彫り)は、単体または司教座や教会の扉、飾り匣や祈禱書の装幀に嵌め込んで、主に宗教的な装飾品として発展を遂げた。宗教改革以降は、王侯貴族の注文に応じて神話や聖書の場面、自身や家族の肖像など多様な主題が制作され、室内装飾品や蒐集品として愛好された。
ギリシア神話を主題とした牙彫工芸としての鑑賞用装飾スプーン2点である。円形ボウルのスプーンは、ヘルメスとパリスの語らい(パリスの審判)の場面を内側に、牧神の顔を裏側に、ボウルを掲げるアルテミスをステムに刻んでいる。魔除けを目的とする奇怪な顔のマスカロン装飾と、西洋建築の女像柱カリアティードを思わせる月の女神が、個性と歴史的な重厚感と格調を感じさせる。
もう一方のスプーンはボウル内側に、オリンポス12神のうち主神ゼウスとその妻ヘラを中心にアテナ、アポロン、ディオニュソスが取り巻く、複雑な構図のレリーフが刻まれている。ハンドル先端の花を背負った女神はアフロディテと思われ、薄衣で体を隠す仕草が丁寧に彫られている。職人の技が冴える小品で、密かに所有し愛でたい彫刻作品である。
*2点は別売りです