Works of Art〜美術工芸品図録15
Bohemian Gilt Chinoiserie Hyalith Glass Goblet
ボヘミア金彩シノワズリハイアライトグラスゴブレット
c1830 Bohamia
1830年頃 ボヘミア
サインなし 長さ:15.0cm
ハイアライトグラスは、19世紀初頭ガラスの生産で名を誇る南ボヘミアのthe Court of Buquoy's Glasswork(ブコイ伯爵ガラス工房)によって開発された不透明な漆黒または朱赤のガラスである(ハイアライト自体はオパールの一種を指す石の名前)。漆塗に金彩を施した東洋の美術品を模したシノワズリ装飾が主流であった。
シノワズリは、17世紀半ば東インド会社(VOC)がヨーロッパにもたらす東洋の品の影響から生まれた中国趣味の装飾様式である。当初は中国の工芸品を単純に模倣していたものが、ロココ最盛期には東洋と西洋の要素が融合され、本来の中国美術とは異なる独自の様式が確立された。
このゴブレットは、黒と見紛う深い暗赤色の分厚く透明なガラスで出来ており、Buquoy's Glassworkの成功を受けボヘミアの別工房が制作したものと思われる。架空の中国式の庭園風景を描いたシノワズリの金彩装飾は、一定の厚さの金で人物の輪郭を描き、スクラッチで顔や着物の細部を刻んでいる。窓辺に置き光の加減で変化するガラスの色味を楽しんだり、和骨董と組み合わせ花を生けても面白い。カット角面にアタリあり。