CabinetⅢ 【第Ⅲ室】〜Works of Art 美術工芸品
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Works of Art〜美術工芸品図録22

Pair of Glass Beakers Enamelled Harbour Scene in Puce Camaïeu 
エナメル港湾風景文グラスビーカー一対


Late 19thC Austria
19世紀後期 オーストリア
サインなし 9.4cm /9.3cm
 
細かな金彩装飾に囲まれたホワイトエナメルの四つ葉型パネルに単色エナメルで港湾風景を描いた変八角形の極薄のグラスビーカー一対。口縁の形状が食器ではなく元から格調高い鑑賞用工芸品として制作されたことを物語る。
 
グラス一客に二面、一対で四面、港の交易場面を全て絵柄違いで描いた質の高いエナメル画から、細密画の特別な訓練を受けた職人が担った作品であることは確実である。マークは無いがハプスブルク家御用達のガラスの名工ロブマイヤー(J. L. Lobmeyr 1823年創業〜)のアーティストが手掛けたと思われる。
 
暗い紫系の赤褐色をフランス語でピュース、単色の明暗だけで絵を描く技法をカマイユと呼び、ピュース・カマイユ(Puce Camaïeu)は、顔料の色の種類が乏しかった18世紀のマイセンなどの古陶磁やエナメル細工で見られる古典的表現である。19世紀後半、生活空間である装飾美術の分野で、18世紀の宮廷文化に強い憧れを抱く貴族や新興ブルジョワのために作られた多くのリバイバル作品のひとつとして制作されたものである。
 
*2点はセット売りです