Works of Art〜美術工芸品図録26
Robj Paris /Henri Quènvil Small Glass Vase
Robj Paris/Henri Quènvil ガラス小花生け
c1915 France
1915年頃 フランス
サイン(器腹):Robj Quènvil
刻印(ブロンズ):JED ROBJ Breveté S.G.D.G. 095
高さ:12.0cm
Robj(ロブジェ)は、1908年にJean Bornがパリで起業した上等で洗練された小物を扱う会社であった。Robjの名で販売される多種多様の商品は、自社制作ではなく、選び抜いた作家や工房に注文で作らせた一流の品であった。1920~30年代の磁器製フィギュアが有名であるが、Jean Bornの生前(1922年に事故死)にラリックやドームらに発注した初期のガラス作品、特に電気ランプは出来が良く蒐集家の評価が高い。
アールデコ様式を得意とするガラスと陶磁器の作家Henri Quènvil (Quenvit)が、Robjのために制作した花瓶である。透明ガラスに芥子色を被せ、紫色のサリシュール(金属酸化物を付着させたガラス素地に溶解ガラスを流し込む技法)で斑文を作り出した芸術的な作品で、流れる色ガラスが織りなす抽象的な模様は、かせた肌に釉を降らせた日本の茶碗に似た味わいがある。
この作品は商品名JED ROBJの刻印からパフュームランプであった可能性があるが、当時のRobjの広告写真にあるように電気コードを繋いだブロンズ製の蓋を被せるには口縁部が薄手で実際に香を薫く道具として販売されたかは疑問である。ざらざらしたガラスの質感を楽しめるよう手元に置き陽光の加減で変化する色感を愛でたり、豆電球を垂らしてヴェイユーズ(常夜灯)にするのがお勧めである。