Miscellaneous〜その他の作品図録11
Boin-Taburet Neo-Rococo Painted Wood Wall Perpetual Calendar
ボワン=タビュレ ネオロココ油彩木製壁掛け万年カレンダー
c1880 France
1880年頃 フランス
高さ:34.5cm 木 真鍮 ガラス 紙 絹
市民革命によってロココや新古典主義といった正統的様式が一時中断していた19世紀後半のフランスでは、生活空間である装飾美術の分野で、ロココ様式を盛んに取り入れるようになる。富裕層である貴族やブルジョワ市民はルイ15世から16世時代の宮廷文化に憧れ、ロココ・リバイバルの作品が数多く作られた。
パリのメゾン、ボワン=タビュレは1873年創業、ルイ15世様式の銀製品ほか小物から家具まで品質の高い工芸品の制作販売で名を馳せた。ブーシェ風クピドの油彩画を収めた小さな金彩額の下には、トロンプルイユ(騙し絵)による大理石風のコリント式三本柱があり、柱の間には温度計とカレンダーが仕込まれた真鍮パネルがある。パネルには愛を表すクピドの矢筒と松明の意匠、日付合わせのつまみは豊穣を表す松毬の装飾である。彩色木製で手動式という経年劣化しやすい作品にもかかわらず、細部まで手抜きのない丁寧な仕上げによって奇跡的に当時の状態を保っている。