Paintings〜絵画図録11
Carl Gustav Klingstedt (1657-1734) Miniature Paintings on Vellum "Magic Mirror Peeping a Lady Wiping Her Breast
カールグスタフ・クリンシュテット細密画「胸元を拭く女を窃視する鏡の精」
c1700 France
1700年頃 フランス
署名なし 羊皮紙に水彩 金彩額
イメージサイズ:8.0 x 5.6cm
ラトビアのリガ出身のクリンシュテットは、スウェーデン軍とフランス軍に従事した後、1690年軍隊でのキャリアを捨てパリでミニアチュール画家として活動を始める。細密画に特化した繊細で確かな画力とエロティックな作風は高く評価され、嗅ぎ煙草入れに描くミニアチュール作品から、ルネサンス期の巨匠になぞらえ「タバティエールのラファエロ」と謳われた。
この細密画は彼の多くの作品同様、人物の肌色以外はグリザイユ画法(モノクローム)で描かれている。鏡(磨かれた鍋蓋?)の前でひとり胸元を拭く女を鏡の中から覗き見る異界の者の顔、視られることを意識した女の蠱惑的な目線、女の瞳や唇のツヤツヤとした輝きは小さな細密画であることを忘れさせる出来である。娯楽の少なかった時代、この絵を所有した者は密かに絵を眺め空想に耽ることに至福の悦びを感じていたことであろう。額縁に付く札は作家の生年が1654年と記されているが実際は1657年である。