Paintings〜絵画図録24
French Empire Silk Embroidered Mourning Picture
フランス帝政モーニング(追悼)シルク刺繍画
Early 19thC France
19世紀初頭 フランス
署名なし ウォールナット・ベニヤ額(オリジナル)
イメージサイズ:26.8 x 19.3cm 額:36.5 x 29.0cm
18世紀末から19世紀初めヨーロッパの芸術分野では理性、秩序、調和を重んじる古典主義や合理主義に対抗して、精神的な内面や、自然や神秘的なものを表現するロマン主義が台頭し、個人の感性や情緒を大切にするセンチメンタリズムがひとつの思潮となった。
そのような時代性を反映したフランス帝政期のモーニング(故人を偲ぶ)の刺繍画である。様々な色や太さの糸を使い、シェニール刺繍などの様々なステッチ(部分的に手描き)で枝垂れ柳の下、墓に跪く少女を描いている。墓標に記した「愛する妻そして母よ 我らの捧げものを受け給え」 のメッセージと折れた木から、故人が夫と娘を残し若くして天に召された女性と分かる。
良い風合いに退色した天然染料が2世紀という時間の経過を物語る。下地のシルクや刺繍は概ね良い状態で、大切に残されてきた作品であることが窺える。