Works of Art〜美術工芸品図録33
Palais Royal Mother-of-Pearl Aide Mémoire
パレロワイヤル白蝶貝備忘録(エドメモワール)
c1820 Paris France
1820年頃 パリ フランス
刻印なし 8.4cm x 5.6cm 白蝶貝 オルモル 絹 紙
18世紀後期、オルレアン公ルイ・フィリップ2世は自宅であったパレロワイヤル中庭の回廊を商店街に改装し民衆に開放した。パレロワイヤルは一時革命の政治拠点ともなったが、帝政時代は王宮の名にふさわしい高級商店が軒を連ね、従者を引き連れた多くの王侯貴族が世界中から訪れた。フランスの力と富に感銘を受けた彼らは高級な土産品を買い求めて帰国し、それらの品々は各地で流行の先端となった。
パレロワイヤル作品の特徴であるパンジーとさらに赤い薔薇が寄り添うエナメルメダイヨン付きの白蝶貝のパネルと "Souvenir"の文字と文様がグラヴュールされたパネルが表紙の手帳である。4隅に2羽の白鳥をかたどった金色のオルモル(銅と亜鉛の合金)の縁取りとオリジナルペンシル上部に繊細な打ち出しが施されている。内側は薄紫色のシルクサテン(褪色と擦れあり)でライニングされたノート(紙)とポケット。ペンシルは芯の出し入れができない。
紙のメモ帳をエドメモワールと呼ぶが、この作品はパレロワイヤルという話題性と高い品質でカルネドバル(舞踏会の手帳)としても活用されたと思われる。