Annexe 6【分室6】〜シール(印章)

Hand Seal ハンドシール

 

Mother-of-Pearl Silver (Intaglio Dog) Hand Seal
白蝶貝彫刻銀製ハンドシール(犬のインタリオ)

c1810 France
1810年頃 フランス
刻印:枝束に斧(1809-1819)
長さ:5.2cm 白蝶貝 銀
 
18世紀後期、オルレアン公ルイ・フィリップ2世は自宅であったパレロワイヤル中庭の回廊を商店街に改装し民衆に開放した。パレロワイヤルは一時革命の政治拠点ともなったが、帝政時代は王宮の名にふさわしい高級商店が軒を連ね、従者を引き連れた多くの王侯貴族が世界中から訪れた。フランスの力と富に感銘を受けた彼らは高級な土産品を買い求めて帰国し、それらの品々は各地で流行の先端となった。
 
当時真珠母貝の細工物はパレロワイヤルの名物として高い人気を誇っていた。このシールは厚みのある良質な白蝶貝を立体的に彫り出したアンピール(帝政)様式のパレロワイヤル作品である。銀の印面は犬の姿と "DE PRÉS DE LOIN(近くで遠くで(貴方を想う))"とインタリオで刻まれている。フランスで"Fidélité(誠実)"の象徴である犬の意匠は贈答品や手紙など親しい者との交流の品に好まれた。 
 

 

Gold-Mounted Green Jasper (Carnelian of Intaglio Horse) Hand Seal
ゴールド装飾グリーンジャスパーハンドシール(カーネリアンに馬のインタリオ)

c1840 Probably England
1840年頃 おそらくイギリス
刻印なし 長さ:6.7cm
 
緑色のジャスパーハンドルと濃い橙色のカーネリアンの印面をゴールドで装飾した色合いの美しいシール。印面のインタリオは跳ね馬と頭文字。ヨーロッパにおいて馬は騎士に関連する動物で忠実や力強さ、戦闘における勝利の象徴であり、跳ね馬は開運をもたらす図像である。
 

 

Coral Cat Climbing Tree and Silver Hand Seal
珊瑚彫刻木登りの猫銀製ハンドシール

Mid 19thC Italy
19世紀中期 イタリア
刻印なし 高さ:4.3cm 珊瑚 銀
 
遠い昔、猫を神聖化していた古代エジプト王朝の貿易船が猫を持ち込んだと伝えられる地中海沿岸諸国のひとつ、イタリアナポリで制作された地中海珊瑚のハンドシールである。珊瑚の天然の枝ぶりを生かして木登りする猫を彫刻した可愛い作品。銀の印面に刻まれた"Sempre"は、イタリア語で「いつも、いつまでも」の意味で、親しい者への手紙に押印するにふさわしい。現在地中海からの珊瑚の産出は汚染により激減しているため貴重である。
 

 

Mother-of-Pearl Hand Holding a Scroll /Silver Hand Seal
白蝶貝彫刻「巻物を握る手」銀製ハンドシール

c1820 France
1820年頃 フランス
刻印:うさぎの頭(1819-1839)
長さ:6.9cm 白蝶貝 銀
 
18世紀後期、オルレアン公ルイ・フィリップ2世は自宅であったパレロワイヤル中庭の回廊を商店街に改装し民衆に開放した。パレロワイヤルは一時革命の政治拠点ともなったが、帝政時代は王宮の名にふさわしい高級商店が軒を連ね、従者を引き連れた多くの王侯貴族が世界中から訪れた。フランスの力と富に感銘を受けた彼らは高級な土産品を買い求めて帰国し、それらの品々は各地で流行の先端となった。
 
当時真珠母貝の細工物はパレロワイヤルの名物として高い人気を誇っていた。このシールは相当に厚みのある良質な白蝶貝を使って「巻物を握った手」を立体的に彫り出した贅沢なパレロワイヤル作品である。銀の印面は所有者の頭文字ETM?と刻まれている。 
 

 

Silver-Gilt Mounted Agate Hand Seal 
縞瑪瑙と鍍金銀製ハンドシール 

c1870 France
1870年頃 フランス
刻印:猪の頭(純度800)と工房印J F
長さ:6.3cm 縞瑪瑙 鍍金された銀
 
焦茶色から乳白色へのグラデーション模様が美しい縞瑪瑙を八角形にカットした小ぶりなハンドルのシールである。鍍金された銀の印面は、ヘルメットの下、獅子と犬が支える3つのマルタ十字と蛇を表す盾の紋章がインタリオで刻まれている。ナポレオンによる勲章制度レジオンドヌール騎士団など何らかの団体または協会の紋章と推察される。 装飾を排したシンプルで品質の高い作品である。
 

 

Bronze Cavorting Putti on Lapis Lazuli Base Seal
ブロンズ「戯れる子ども」/ラピスラズリ シール

c1880 France
1880年頃 フランス
刻印なし 高さ:3.3cm ブロンズ ラピスラズリ
 
高さ8ミリ程度のラピスラズリ(瑠璃)の台座に、絡み合い戯れるふたりの子どものブロンズ彫刻をマウントしたハンドシールである。子どもたちの顔の表情や手足の指などは僅か25ミリの彫像とは思えない緻密さで、どの角度から見ても動きの感じられる作品である。金色の斑点が輝く群青色の石ラピスラズリは、その神秘性で古代より人々を魅了してきた。 印面は何も刻まれておらず未使用である。 
 

 

6 Intaglio Pastes Multi Seal Wheel
6インタリオ ペースト車輪型シール

Early 19thC England
19世紀初頭 イギリス
刻印なし 長さ:3.7cm 金色合金 模造宝石(ペースト)
 
宝石を模した人工素材ペーストは、鉛によって透過率や屈折率を高めたガラス(高鉛フリントガラス)の一種で、ヨーロッパでは18世紀後期からペースト・ジュエリーが流行した。スコットランド出身のJames Tassie(ジェームス・タッシー 1735–1799)と甥のWilliam(ウィリアム)は、色付きペーストに古代のカメオやインタリオを復刻し大成功をおさめた。ウィリアム・タッシーによるインタリオ彫刻を施したペースト6点をセットした車輪型のシールである。
 
以下はペーストの色と図像。文字は古英語が使用されている。
 
①アンバー風/アザミの花
②ブラッドストーン風/ハートを天秤にかけるクピド
③ホワイトカルセドニー風/花籠とクピド(欠け有り)
④アメジスト風/二羽の鳩に導かれるクピド
⑤オニキス風/鳥
⑥ブルーカルセドニー風/薔薇
 

 

Victorian Bronze Cube Seals
ヴィクトリアン ブロンズ製キューブ型シール

c1850 England
1850年頃 イギリス
刻印なし 高さ:1.2cm(手前右) 1.5 /1.6cm(2点) ブロンズ
 
六面体の各面に異なる図像や文字をインタリオで刻んだキューブ型のシール三点である。
 
①六面全てに男女(歴史上の人物)の肖像
②手紙の絵と"U O ME"(次の便りは貴方から)、蒸気機関車や薔薇の絵など(おそらく男性用)
③手紙をくわえた鳩、鳥籠から飛び立つ小鳥、白鳥や忘れな草の絵など(おそらく女性用)
 
*バラ売りします
*②③SOLD* 

過去の作品

Gilt Metal Dancing Man Miniature Seal 
鍍金合金「踊る男」ミニチュア・シール

Late 19thC France
19世紀後期 フランス
刻印なし 高さ:3.5cm 合金 アメジスト
 
このシールは、ちょうど事務用三文判の極小訂正印のサイズである。当初から実用ではなくミニチュア愛好家に向けて制作された作品である。帽子を手に楽しげにステップを踏む男性像は僅か2.2cm、アメジストの印面は直径0.5cmで何も刻まれておらず未使用である。フォブやペンダント用の装身具ではなく、このように小さなシールは珍しい。
*SOLD* 

Carved Smoky Quartz Dog Head Hand Seal
スモーキークオーツ彫刻犬の頭ハンドシール

Middle 19thC Probably France
19世紀中期 おそらくフランス
サインなし 高さ:2.7cm
 
西洋では魔除けとされる水晶の一種スモーキークオーツ、その塊から犬の頭と印面を彫り出したハンドシールである。シールジュエリーのような小さい作品以外で立体像を彫刻した天然石のシールは珍しい。後年これに着想を得たプレス成型ガラスの量産品とは別格、貴族趣味の贅沢な一点ものである。
 
19世紀の芸術分野におけるセンチメンタリズムを背景に、フランスで"Fidélité(誠実)"の象徴である犬の意匠は贈答品や手紙など親しい者との交流の品に好まれた。印面は貴族を示す王冠と共に頭文字OH?と刻まれている。犬の左耳にアタリあり。
*SOLD*

Tusk Dog Handled Silver-Gilt Miniature Seal
牙彫犬ハンドル銀製ミニチュア・シール

Late 19thC France
19世紀後期 フランス
刻印:猪の頭(純度800)
高さ:4.6cm 獣牙 鍍金された銀
 
このシールは、ちょうど事務用三文判の極小訂正印のサイズである。当初から実用ではなく細密な牙彫愛好家向けに制作された贅沢な細工物である。
 
19世紀の芸術分野におけるセンチメンタリズムを背景に、フランスで"Fidélité(誠実)"の象徴である犬の意匠は贈答品や手紙など親しい者との交流の品に好まれた。印面は何も刻まれておらず未使用である。
*SOLD* 

Coral/ Tusk Amulet "Higa (or Clenched Hand)" Seal 
珊瑚/獣牙邪眼除け「ヒーガ(握られた手)」ハンドシール

Middle 19thC Probably Italy
19世紀中期 おそらくイタリア
刻印なし 長さ:11.4cm
獣牙 珊瑚 ジャスパー? 鍍金された金属
 
「邪眼 (evil eye)」は、悪意を以て相手を見ることでその者に不幸または死をもたらす目のことで、呪いのひとつである。世界に広く分布する迷信であるが、古代よりヨーロッパでは地中海周辺での信仰が深く、「ヒーガ」という握りこぶしの形をしたお守りを邪眼除けとする。
 
メドゥーサが退治された時に海に散った血が赤い珊瑚となったという神話から魔除けの意味を持つ珊瑚と白い牙の握りこぶし、さらに魚とハートのチャームを組み合わせた、珍しいお守りシールである。印面は何も刻まれておらず未使用である。 
*SOLD*

French Gilt-Steel 3-Faces Revolving Seal
フランス製 鍍金スチール製三面回転式シール

Late 18thC France
18世紀後期 フランス
刻印なし 高さ:3.8cm スチール
 
フランス貴族(個人)の紋章または標章を3パターンにアレンジしたものを、スチール製の三面体の各面にインタリオで刻んだシールである。三面体が回転することで、書簡の相手によって封蝋の印影を使い分けることができる。
 
実用性を重視したスチール(鋼)素材にもかかわらず、シール全体に施した鍍金と透かし細工の装飾が、風格を感じさせる作品である。
*SOLD*