Annexe 6【分室6】〜シール(印章)

Writing Set 文房具セット

Maison Alphonse Giroux Bronze Handsome Man (or Woman) Desk Set
メゾン・アルフォンス・ジルー ブロンズ美青年(または男装の麗人)デスクセット

c1840 France
1840年頃 フランス
刻印:A. GIROUX
高さ:16.5cm シール:5.2cm ブロンズ 
 
18世紀末から19世紀初めヨーロッパの芸術分野では理性、秩序、調和を重んじる古典主義や合理主義に対抗して、精神的な内面や、自然や神秘的なものを表現するロマン主義が台頭し、個人の感性や情緒を大切にするセンチメンタリズムがひとつの思潮となった。
 
ワインの樽を左腕に抱えカップをこちらに差し出す端正な若者、花咲く地面に置かれたドラムやパニエがワイン産地の自然を想起させるブロンズ彫刻作品。美青年あるいは男装の麗人か、見る者の想像力を掻き立てる人物の姿は当時の社交界を賑わした恋多き男装の女性作家ジョルジュ・サンド(1804-1876)のイメージであろうか、時代性を反映した意匠と言える。首から下にシールが仕込まれ、ドラムがインク入れとなる。ワイン樽やパニエはペン先やワックスを収納できる。シール印面は所有者の頭文字G? Mと刻まれている。
 
文房具の範疇を超えた質の高いブロンズ彫刻は一流メゾン、アルフォンス・ジルーによる。1799年パリで創業し高級家具と小物の製造販売で王侯貴族や新興ブルジョワを虜にしたアルフォンス・ジルーは、代が変わり店を閉じる1885年までの間、常に顧客が望む最高の贅沢品を提供していた。
 

 

Silvered-Metal 4-Leaf Clover Bookmark and Desk Seal Set
銀メッキ四葉のクローバー ブックマーク/デスクシール揃い

c1890 France
1890年頃 フランス
刻印なし ブックマーク:10.8cm シール:6.2cm
 
四葉のクローバーをかたどったブックマークとシールのセット。葉の上にアップリケされた昆虫(テントウムシとトンボ)が、ジャポニズムの影響を感じさせる。シール印面は飾り文字でH?と刻まれている。パリのプティ=シャン通りFortineau(?)のオリジナルケース入り。ケースの蓋にはHélène(エレーヌ)と金で箔押しされている。
 

 

Japanese Mixed-Metal /Mother-of-Pearl Letter Opener and Desk Seal Set
明治輸出向け合金/白蝶貝レターオープナー/デスクシール揃い

Late 19thC (Meiji) Japan
19世紀後期 明治時代 日本
刻銘 : 立本
レターオープナー:21.5cm シール:7.8cm
 
日本の金属工芸は江戸時代、刀装金具の製作によって工芸品としての高まりを見せる。金、銀、銅、鉄のほか赤銅や四分一などの合金から得られる色調と象嵌や彫刻による緻密な作品は、明治時代には欧米の万博でも高く評価され輸出が増加する。
 
この作品は明治の高級工芸品の廉価版として欧米向けに作られた文房具である。ハンドルは象嵌や手彫りの代わりに鋳造モチーフに一部鍍金で色付けしている。鋳造とはいえ非常に繊細な作りは、ジャポニスム全盛のヨーロッパで感動とともに珍重されたであろう。シール印面は所有者の頭文字A Gと刻まれている。オリジナルケース入り。
 

過去の作品

NapoleonⅢ Silver Dog Head 4-Piece Writing Set
ナポレオン3世時代銀製犬の頭文房具4点揃い

c1850 France
1850年頃 フランス
刻印:猪の頭(純度800)、ペンナイフの刃に??NAULT
レターオープナー:17.7cm シール:7.6cm
 
レターオープナー、ペン軸、ペンナイフ、シールの3点セットである。シールの印面は所有者の頭文字P Mと刻まれている。ペン先は金属製ではなくカットした鳥の羽根がついている。羽根の根元を削ってペン先に整形するためのペンナイフは独特な形の刃である。
 
フランスでは"Fidélité(誠実)"の象徴である犬の意匠は、贈答品や手紙など親しい者との交流の品に好まれた。紋章の図像風の犬の頭と葉飾り文様の装飾が威厳を感じさせる文房具セットである。オリジナルケース入り。
*SOLD*

Rock Crystal Coiled Silver Serpent 4-Piece Writing Set
銀製蛇装飾水晶文房具4点揃い

Late 19thC Probably Austro-Hungary
19世紀後期 おそらくオーストリア=ハンガリー帝国
刻印:白鳥(フランス輸入印)、オーストリア(ウィーン)輸入印
ペン軸:18.2cm シール:5.2cm
 
水晶のハンドルに銀の蛇を巻きつけた文房具のセット。ギリシア神話で蛇は生命力や再生を表す動物とされ、1匹の蛇が巻きついた「アスクレピオスの杖」は医学の象徴である(杯に巻きついた「ヒュギエイアの杯」は薬学の象徴)。当時の医学関係者が所有した文具かもしれない。
 
レターオープナー、ペン軸、繰り出し式ペンシル、シールの4点セットである。シールの印面は何も刻まれておらず未使用である。 一見シンプルなデザインであるが、水晶表面に固定された銀の蛇に接着の痕跡が見られず、手間をかけた上等なつくりであることが分かる。高級皮革モロッコ革のオリジナルケース入り。
*SOLD*

Carved Tusk Grinning Boys Bust 3-Piece Writing Set
牙彫笑う少年の胸像文房具3点揃い

Late 19thC Dieppe France
19世紀後期 ディエップ フランス
刻印:猪の頭(純度800)、DÉPOSÉ F.D レターオープナー:23.0cm シール:7.2cm
 
フランスノルマンディー地方、イギリス海峡の港町であるディエップでは、古くから西アフリカ海岸より地元の動物の牙と彫刻技術が輸入され多くの細工品が作られた。17世紀バロック期以降、牙彫の需要が高まり、ディエップは細工の中心地となる。
 
ディエップ獣牙細工のレターオープナー、ペン軸、シールの3点セットである。シールの印面は所有者の頭文字A Kと刻まれている。笑顔の少年胸像のハンドルは各々違う帽子を被っている。歯を見せて笑う子供の表情を小さな道具の装飾のために細工した職人の技量が素晴らしい。オリジナルケース入り。
*SOLD*

French Count's Carved Tusk 3-Piece Writing Set by Correaux
フランス伯爵家の牙文房具3点揃い

Late 19thC France
19世紀後期 フランス
刻印:猪の頭(純度800)
 
レターオープナー、ペン軸、シールの3点セットである。B Cの頭文字とともにフランス貴族の伯爵 Comte(男)/ Comtess(女)を示す王冠を彫刻した獣牙ハンドル。またシールの銀製の印面には王冠とともに二つの盾を支える動物の紋章が刻まれている。
 
当時パリの都市計画の一環で造られた高級商店街パサージュのひとつ、1860年開業のパサージュ・プランスに軒を連ねた獣牙工芸店CORREAUXのラベルの残るオリジナルケース入り。
*SOLD*