Annexe 2【分室2】〜 香水瓶②

Scent Bottle /Flacon à Sel 嗅ぎ壜とフラコン・ア・セル

 

Sampson Mordan & Co Owl Silver-Mounted Glass Scent Bottle
サンプソン・モーダン銀製フクロウ香水瓶または気付け薬入れ

1902 London England
1902年 ロンドン イギリス
刻印:純度950、1902年、ロンドンを表す英国印、S.M&Co(Sampson Mordan & Co. 工房印)
長さ:5.7cm 銀 ガラス
 
繰り出し式シャープペンシルの発明で特許を取得し金銀製の文房具の制作で有名なイギリス銀職人サンプソン・モーダン(Sampson Mordan 1790-1843)が起こした会社は、彼の死後も息子が事業を引き継いで戦争で工場を失うまで作品を世に送り続けた。Sampson Mordanのノベルティ(目新しく珍しいの意)作品は質が高く面白味があり蒐集家の間で人気が高い。
 
フクロウ(ミミズク)の頭の銀製ネジ蓋つきの逆さ滴型のガラス瓶。蓋内側はコルクが貼られている。カンは無い。小さな瓶の蓋でありながら質の高いフクロウの義眼や羽根表現の精緻さはサンプソン・モーダンの本領が発揮されている。
 

 

Neo-Renaissance Enamel Mermaids Silver Scent Bottle
ネオルネサンス銀製エナメル人魚文香水瓶または気付け薬入れ

c1870 France
1870年頃 フランス
刻印:猪の頭(純度800) 長さ:8.4cm エナメル 銀
 
幻獣など異形の生物と植物の曲線文様で装飾する美術様式グロテスクは、古代ローマを起源とし、ルネサンス盛期にグロッタ(人工洞窟)の流行とともに広まった。19世紀に新古典主義の影響から再び流行し、幻想的な意匠はのちのアールヌーヴォーなど世紀末芸術に影響を与えた。
 
ホタテ貝の形をした銀のオーバーレイ装飾の両脇にふたりの人魚をエナメル絵付けで描いた香水瓶。裏面は古代の香炉をカラフルなルネサンス風装飾で取り囲んだ絵柄である。蓋やオーバーレイ装飾の銀部分は全て手彫りで精緻な模様を施している。黒い地色の神秘的な雰囲気のエナメル絵付けと銀細工を品良く調和させた、洗練を極めた作品である。
 

 

Blue Opaline Glass Scent Bottle with Silver Plated Decoration
ブルーオパーリンガラス/銀メッキ装飾香水瓶または気付け薬入れ

c1870 France
1870年頃 フランス
刻印なし 壜の長さ:7.0cm 合金 ガラス 牙板?
 
17世紀のヴェネツィアで開発された不透明な乳白色のオパーリングラス、フランスにおいては復古王政期にバカラが製造を始めたことで19世紀に人気を博すようになる。透明感の無いトルコ石のようなガラスに銀メッキのルネサンス風装飾が映える香水瓶である。オリジナルチェーンとコルク栓付きの蓋が残る良い状態(栓はゆるい)。片側のフレームに手描きした花束の細密画、もう一方にミラーが収められている。ロココ文化の18世紀以降、貴婦人にとってフラコンや化粧品、お針道具を綺麗な小袋におさめ身につけることは大切なおしゃれのひとつであった。

 

Cut Glass Sent Bottle and Porcelain Love Birds Stopper
磁器製ラブバード型栓つきカットガラス香水瓶/気付け薬入れ

Late 18thC Probably England
18世紀後期 おそらくイギリス
刻印窯印なし 長さ:5.9cm 軟質磁器 金色合金 ガラス
 
キスする二羽の小鳥の磁器製栓付きのカットガラスの香水瓶である。元来、鎖で繋がっていた金色金属の壜の口と栓下部は、鎖が切れた状態である。栓の鳥は、東洋磁器への憧れから磁器製作を模索していた18世紀ヨーロッパの軟質磁器で、「トイ」と呼ばれるミニチュア作品を手掛けていたイギリスのチェルシー窯あたりのものと思われる。オリジナル鮫皮ケース入り。鳥の羽に一箇所欠け有り。
 

 

Bohemian Ruby Overlay Glass Scent Bottle with Silver Ring & Chain Attachment
ボヘミアン銅赤ガラス/銀製指輪と鎖付き香水瓶または気付け薬入れ

Late 19thC Bohemia
19世紀後期 ボヘミア(現チェコ)
刻印:猪の頭(純度800) 壜の長さ:9.8cm 銀 ガラス
 
滴型扁壷状のガラス瓶は、ボヘミアンガラスの特徴である「銅赤」と呼ぶ酸化銅によって生成されるルビー色の被せガラスを、グラヴュールで森の中を走る猟犬とウサギを見事に陰刻した作品である。元の所有者Minaの名が刻まれた銀製蝶番の蓋を開けると小さな銅赤ガラスの中栓が現れる。フランス銀刻印から、ボヘミアで制作されたガラスをフランスに輸入し銀細工を施したものと思われる。鹿や風景を彫ったボヘミアンガラスは数多いが、女性を意識したウサギの意匠は珍しい。
 

 

HERMÈS Silver Handbag Perfume Bottle by Ravinet d'Enfert
エルメス/ラヴィネ・ダンフェール銀製ハンドバッグ用香水瓶

c1960 Paris France
1960年頃 パリ フランス
刻印:蟹(純度800)、R D(工房印)、HERMÈS PARIS
長さ:5.0cm 銀
 
19世紀半ばまで遡る歴史を持つパリの銀工房ラヴィネ・ダンフェールは、カトラリーを中心とした銀食器に定評があり数々の万国博覧会で賞を獲得した。1930年代から70年代までエルメスのメゾンで販売する銀や銀メッキ製の文房具や喫煙小物の制作に携わった。エルメスの世界観を象徴する馬やゴルフボール、ロープをモチーフとした彼らの小物作品は、現代でもヴィンテージ・エルメスとして世界中で人気を誇る。
 
1726年から15年間発行された、ルイ15世16歳の肖像を描いたエキュ銀貨を用いて作った銀製香水瓶。エルメスは古いフランス銀貨を加工した銀製小物を多数制作したが、この作品もそのひとつである。液体が漏れてハンドバッグを汚さぬようネジと蝶番を駆使した密閉度の高い特別仕様。
 
ラヴィネ・ダンフェールは1984年に活動を停止、Ercuis(エルキューイ)に吸収される。貴重なヴィンテージ作品となる。
 

 

G. Boutigny Limoge Enamel Scent Bottle
G. Boutigny リモージュエナメル香水瓶

Late 19thC France
19世紀後期 フランス
刻印なし 革製ケースに"G. BOUTIGNY PALAIS ROYAL PARIS"のラベル
長さ:6.3cm エナメル 鍍金された銀 ガラス
 
森でリュートを奏でる乙女を容器全体にエナメルで描いた小さな携帯用の香水瓶。鍍金された銀製蝶番のついた蓋を開けると小さなガラスの中栓が現れる。エナメル細工の盛んなリモージュ地方で作られた品を、パリの高級商店街パレロワイヤルに店を構え高級なガラス陶磁器などを扱う G. Boutignyが販売したものである。オリジナル革製ケース入り。
 

過去の作品

Gold Mounted Clear Glass Flacon à Sel with Gold Stopper
18金装飾ガラス気付け薬入れ(フラコン・ア・セル)

Middle 19thC France
19世紀中期 フランス
刻印 : 鷲の頭(18金) 判読困難な工房印 長さ:10.1cm
イエローゴールド ガラス コルク
 

滴型扁壷状のガラス瓶は、花文様のグラヴュール細工の18金の蝶番の蓋を開けると小さな金とコルクの中栓が現れる。ガラスではなく18金の中栓は非常に珍しい。 ロココ文化の18世紀以降、貴婦人にとってフラコンや化粧品、お針道具を綺麗な小袋におさめ身につけることは大切なおしゃれのひとつであった。
*SOLD*

Bohemian Garnet Mounted Cut Glass Scent Bottle
ボヘミアンガーネット/カットガラス香水瓶

Late 19thC England
19世紀後期 イギリス
刻印なし 長さ:6.4cm ガーネット 金張りした銀 ガラス
 
18〜19世紀にかけボヘミア王国で産出されたパイロープ(苦礬柘榴石)に種別されるガーネットは、暗赤色が蝋燭の明かりにかざすと炎のように赤く輝く特徴を持つ。採り尽くされたガーネットは現在のチェコ共和国(旧ボヘミア)ではもはや産出されず大変に貴重である
 
ヴィクトリア時代のボヘミアンガーネット作品に多く見られる金張りの銀製蝶番の蓋を開けるとさらに小さなガラスの中栓が現れる。
*SOLD*

Maison Alphonse Giroux Gold Double Ended Scent Bottle (Flacon Double)
メゾン・アルフォンス・ジルー 18金双口香水瓶(フラコン・ドゥブル)

c1870 Paris France
1870年頃 パリ フランス
刻印:鷲の頭(18金) グラヴュール:Alphonse Giroux Paris 
長さ:12.5cm 18金(2カラー) ガラス
 
別に作った二つのガラス瓶を溶着して作られるダブルエンドの香水瓶は、フラコン・ドゥブルとも呼ばれる。ガラスの中栓のついた蓋側に香水、裏にガラスの円盤が仕込まれたバネ仕掛けの蓋側に気付け薬(セル)を入れる仕様となる。この作品はセルの揮発性の香気を逃がさないよう仕込まれた円盤内部に、Alphonse Giroux Paris と刻まれている。
 
1799年パリで創業し高級家具と小物の製造販売で王侯貴族や新興ブルジョワを虜にした有名メゾン、アルフォンス・ジルーは、代が変わり店を閉じる1885年までの間、常に顧客が望む最高の贅沢品を提供していた。オリジナル革ケース入り。

*SOLD*

Silver Mounted Clear Glass Flacon à Sel with Glass Stopper
銀装飾ガラス気付け薬入れ(フラコン・ア・セル)

Middle 19thC France
19世紀中期 フランス
刻印 : 猪の頭(純度800) 長さ:10.5cm 銀 ガラス
 
滴型扁壷状のガラス瓶は、グラヴュールが施された銀の蝶番による蓋を開けるとさらに小さなガラスの中栓がつく。現状この栓は固く密閉し開けることができないが、当時の炭酸アンモニウムの結晶の気付け薬が入った貴重な資料である。
*SOLD*