Paintings〜絵画図録28
Louis XⅣ Oil on Canvas “Beheading of St. Paul”
ルイ14世油彩画「聖パウロの斬首」
Early 18thC France
18世紀初頭 フランス
署名なし 同時代の金彩木彫額
イメージサイズ:16.5 x 24.5cm 額:23.5 x 31.5cm
かつてはキリスト教徒を迫害していたユダヤ教ファリサイ派のパウロ(当時はサウロ)は、復活したイエスの声を聞き回心し福音を伝道する使徒となった。エルサレムで捕縛されたパウロは皇帝ネロ統治下のローマ帝国で紀元後60年頃に処刑されたと伝えられる。新約聖書に収められたパウロ書簡はキリスト教の布教に大きく貢献した。
聖パウロの殉教を描いた1700年頃のフランス作品である。キャンバスに描いた当時の油彩画としては珍しく小さなサイズで、聖パウロを崇敬する上流階級の者が自室用に注文したと考えられる。時代の潮流であったバロック絵画における聖パウロの殉教は、光の明暗や躍動感のある写実的な人物描写で斬首場面を劇的に描いたものが多い。一方この作品は、残忍な場面にもかかわらず、風景の一部として小さく描いた人物や飛ぶ鳥と等しく表した神々の姿が中世の宗教画や写本挿画の世界観と共通する静謐さを感じさせる。